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介護日記は愛の手紙/花を見れば輝く母へ

  城戸真亜子さん「ケアノート」
             介護日記は愛の手紙/花を見れば輝く義母へ
                              (読売新聞 平成21年2月8日)

洋画家の城戸真亜子さん(47)は3年前から、認知症の義母、トミエさん(87)と一緒に暮らしています。この7年間に実の両親と義父の3人を病気で亡くし、十分な介護が出来なかったのではないか、と悔いが残っているそうです。だからこそ「今を大事にしたい」と、日々介護に向き合っています。

東京でマンション住まいの主人と私は仕事が忙しく、埼玉に住む主人の両親とは、年に数回、食事をする程度のつきあいでした。2004年に義父が肝臓ガンとわかり、手術で入院した約2か月間、義母は私たちと暮らしました。

以前から、義母は認知症のようだ、と父が言っていましたが、私たちにはそう見えませんでした。ところが、一緒に住み始めると、同じことを何度も繰り返して話すなど、様子がおかしい。心療内科で診察してもらったところ、認知症だと診断されました。


城戸さんは、創作活動やテレビ番組への出演などで多忙な日々を送っていた。義父の退院後、同居を持ちかけたが、義父母は2人暮らしを望んだため、近所に引っ越して来てもらった。2人は介護サービスを利用し、城戸さんは様子を見に通い、週2回ほど夕食を共にした。義父が入退院を繰り返したため、3年前から同居したが、その1年後、義父は死去した。


義母は、義父が亡くなったことを覚えることができませんでした。食事のたびに「おとうさんは?」と聞きます。ケアマネージャーさんの助言で、小型の透明なケースに義父の写真と手紙を入れ、手元に置きました。

手紙には、義父の命日やお墓の場所、そして義母には『今は私たちと一緒に住んでいます。これからもよろしくお願いします。真亜子』という言葉を添えました。義母は何度も見ては、その都度納得していました。

朝起きるたびに、自分がどこにいるのかわからなくなりました。ものや場所の名前、伝言を紙に書いて家中に張りました。寝室には、『9時ごろ朝ご飯にします。それまでは寒いから布団に入っていてくださいね』とメモを置き、毎朝、話しかけながら体をふき、リハビリパンツを取り換えて起こし、リビングに一緒に行きます。

義母は以前、お茶とお花の師範をしており、気位の高い人でした。しかし、認知症になってからは、お風呂に何日も入らなかったり、食事の際にお行儀がちょっと悪かったり。主人はそうした姿にがく然としていました。


現在、トミエさんは要介護度4。週2回のデイサービスと、城戸さんらの仕事の忙しさに応じてヘルパーや、ショートステイを利用。仕事場のアトリエは同じマンション内にあり、食事やおやつの時間には、必ず自宅に戻る。温かい言葉をつづったノートを日記として目につくところに置き、不安にさせないよう工夫をしている。


介護日記というより、義母への手紙のつもり。私たちに迷惑をかけていると心配し、何度も「帰らなきゃ」と言うので、望まれた存在だと常に伝え、安心させたいんです。

1日の出来事を書くほか、写真や外食した店の箸袋、散歩した時に拾った落ち葉などをノートに貼り付け、『今日は出かけて楽しかったですね』。野菜の皮むきや洗濯物の片づけなど家事を手伝ってくれた時は『ありがとうございます。助かっています』。何気ない言葉ばかりですが、義母は読んでいる時は笑顔になります。

暴言を吐いたり、妄想を抱いたりすることもなく、徘徊してマンション外に出ることがないのにも、助かっています。

2年前、自宅で尻餅をついた際に腰の骨を折ってしまい、しばらく入院しました。寝たきりになると、認知症が進む心配があったので、退院後、ベランダの花が見える日当たりのいいリビングにベッドを移し、積極的に話しかけ、義母が家族の動きを見守れるようにしました。すぐに歩けるようになり、認知症の進行もありませんでした。


城戸さんは父を肺がんで亡くした後、母が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された。病気は急速に進行し、義父が亡くなった3ヵ月後に肺炎で急死した。


母が突然亡くなり、人の命はいつどうなるかわからないと実感しました。義母を介護するようになり、「大変ね」とよく言われますが、家族のぬくもりを感じながら、介護の役割を果たせることは、私の心の支えになっています。

時々、花を買って帰ると義母の表情がぱっと明るくなり、見事な生け花に仕上げてくれます。仕事と介護の両立に悩む時もありますが、義母の立ち居振る舞いを見ていると、家族との温かい思い出があれば、年老いても生きていけると教えられています。


きど・まあこ 洋画家。1961年名古屋市生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒。81年に女流画家協会展、98年には現代美術の新進作家の登竜門と言われるVOCA展にそれぞれ入選。東京湾アクアライン・海ほたるパーキングエリアの壁画など、作品多数。近年は「水紋」をテーマにした作品を制作している。学研・城戸真亜子アートスクール主宰。


<取材を終えて>
介護日記の1冊を見せてもらった。ユズ湯に一緒に入る2人の姿など、ほのぼのしたイラストが随所に描かれている。ふと、トミエさんの頭の部分が切れた写真が何枚もあるのが目についた。「髪の毛が薄くなったことを気にしていて、写真を見てショックを受けることがないように、撮影の角度に気をつけているんです」と城戸さん。細やかな配慮がトミエさんの穏やかな表情につながっている気がした。              (聞き手・島 香奈恵)


      (平成21年2月8日 読売新聞 ケアノート)


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